汗と泥にまみれ働いていたベトナムの農民が世界中を驚かせた。かつて食糧不足に悩まされたベトナムが、90年代には農産物輸出国へとのし上がったのだ。近代化が進み、工業化の発展とともに「ベトナムの労働者は勤勉で熱心」と評判を呼ぶようになった。
「工員が正確に仕事をこなし、ここまで信頼の置けるベトナムのような国は世界中どこを探してもありません」と日本の政策研究大学院大学のOhno Kenichi教授はいう。「ベトナム各地の、エビ加工工場から縫製工場、電子部品組立工場まで、100以上もの工場を見て回りました。そこで見たベトナム人労働者の仕事振りには感嘆させられました」とOhno教授は続ける。
Dong Nai省のNikeベトナムの生産工場で、Nguyen Thi Thuさんは手に握ったペンチを軽やかに動かし、靴の中敷を貼り付けるという、忍耐力と正確さが求められる作業をこなしていた。22歳のThuさんは、マメだらけの手を見せながら「1日に加工するのは平均100足くらいですね」と言った。Thuさんが担当する工程の次には、中敷に「Shox」というロゴが貼り付けられていた。今や「Shox」と言えば日本やアメリカの若者の間で大流行しているシリーズだ。世界のNike生産工場では、Thuさんのように朝から晩まで働く労働者がおよそ50万人いるという。Thuさん達が働くTae Kwang Vina工場は、その中でも最も難しいとされる工程を請け負っている。
ベトナムでの活動が長い投資家や、国際的に活躍する専門家たちは、ベトナム人労働者を世界で最も手先が器用だと認めている。創造性やスピードには欠けるかもしれないが、勤勉さや熱意、向上心、学習能力が高いことなども評価されている。Thuさんたちのような工員がベトナムを“世界の工場”に変える日も遠くはないかも知れない。
Ohno教授も、ベトナム人労働者は、手先の器用さが求められる生産分野において世界のトップに立つ可能性があるという。
工業政策が推し進められている段階で、多くの外国投資家がベトナムの労働市場の開拓を始めている。Nikeはその一例だ。アメリカによる経済制裁が解除された直後、Nikeを始めとする多くのアメリカの企業が、若くて安価で豊富な労働力を求めてベトナムへ進出した。Nikeベトナム社のSteve Woodside取締役は「我々が発展を遂げてこれたのは、難しい商品も製造できる優秀な工員たちのお陰です」と語った。現在ベトナムで稼動している7つのNike工場の従業員は5万人で、世界のNikeシューズの17%を製造している。Woodside取締役は「ベトナム人労働者は、学習意欲と向上心が高く、正にNikeが必要としている理想の人材なのです」と語る。Ohno教授によると、もしこれらの人材に加え、質の高い経営管理体制や投資環境が整えば、ベトナムは木製品生産、水産物加工、縫製、電子部品組み立て等、他の分野でも同様の成功を遂げることができるという。「中国には優秀なエンジニアと資源が揃うが、ベトナム人労働者ほど器用ではないため、彼らがこの分野で先頭に立つことは出来ないでしょう」とOhno教授は述べた。
専門家によると、現在のベトナムでは、管理者、エンジニア、商品デザイナー、マーケティング専門家などの労働力がまだ不足しているという。とは言え、組み立てなどの単純作業、特に手先の器用さが必要な作業においては、ベトナムの労働力は非常に優秀だと評価されている。
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