サル料理ブーム、絶滅の危機を招く

 Ha Tinh省Huong Khe県の集落では、長い間、サル料理が郷土料理として親しまれている。サルの頭を切り落とすのは野蛮な行為ではあるが、生食されるサルの脳みそは特に人気がある。サルの肉が珍重されるようになると、近隣の森林保護区域でサルの卸売りを専門に行う業者も出現した。
バイクタクシーに乗り、動物の売買で有名なToan爺さんの家を訪ねてHuong Pho駅周辺の入りくんだ路地に入った。私がサル料理の店を開きたいと言うと、爺さんは笑いながら、「何も心配せずに店を開きなさい。客はわしが紹介してあげるし、サルの仕入先もルートも心配ない。ただ、成功したいなら、事前の念入りな準備が大切だぞ」と言った。
サルを潰すのは犬を潰すのと何ら変わりはない。ただ、サルの頭を切り落とすという工程がひとつ加わるだけだ。これは、脳みそ好きや慢性の頭痛持ちの人々によく売れるからである。客は偽物や鮮度が落ちたものを避け、新鮮な生の脳みそにありつくため、わざわざ店に足を運ぶ。そのため、サルたちは料理される前の儀式として、死刑台に上らなければならない。その死刑台とは、下からサルの頭をねじ込むと頭の1/3ほどが上に出るようにくりぬかれたテーブルだ。客がテーブルにつくと、目の前にサルとたっぷりの香菜類、横には調味料が並べられ、店主が鋭利な包丁を横に一振りし、サルの頭頂部をすぱっと切り落とすのだ。
Toan爺さんは「サル粥店が登場し始めた頃は、肝っ玉の小さい店主たちは頭を割るのが怖くて電気で殺していたのさ。電気を使うのが怖い奴は荷袋にサルを放り込んで水に沈め窒息させてな、死体を引き上げてから血を取っていたんだ。脳みそを注文する客がいない時には、死刑台行きは免除になるが、犬と同じように血を抜かれるのに変わりはない」と説明してくれた。サルの血は酒と混ぜて、胆嚢と一緒に飲まれる。客が脳みそを食べている間、店主はサルの体毛を剃り、バーナーを使うかアルコールで表面を焼いてキツネ色に仕上げ、香りを立たせる。骨からはずされた肉は、客が料理を注文するまで冷蔵庫で保管される。皮は挽き機で細かく挽かれる。骨は、牛や豚の骨と一緒に煮込まれ、粥を作るときのスープベースとなるが、さっと茹でてから干され、猿骨膠を作る材料に使われることが多い。肉を使った料理は茹でもの、揚げもの、焼きもの、丸焼きなどで、挽肉にしてからネギ、脂と炒めて粥に添えたりもする。サル粥1杯の価格は普通8,000ドン(約0.53ドル)、スペシャルの場合は1万〜1万2,000ドン(約0.67〜0.8ドル)で、客のほとんどがスペシャルを注文する。また、酒を飲む客に最も人気があるのは3段式の電気オーブンで焼いた焼肉で、カリカリと歯ごたえがよく、濃厚なサルの脂の香りがしっかり閉じ込められている。
Toan爺さんが案内してくれたサル粥専門店では、サルの死刑台は穴の空いたテーブルではなく、家の裏にある柱だった。腹の突き出た1人の客が席について生の脳みそが出てくるのを待っていた。店主は2キロほどのサルを捕まえ、柱に縛り付けた。となりの鉄格子でできた檻の中には3匹の赤い顔のサルが毛繕いをし合っていたが、慌てて叫び声を上げ、身を縮めた。この3匹のサルたちの体には、猟犬に噛まれたり罠に掛かったときに金具で切れた傷痕があった。今にも頭を割られようという時、サルは両手を合わせて上下に振り、懇願するかのように拝み出したのだ。店主と客はそれが目に入らないのか、その光景にあまりにも慣れてしまったのか、無表情だった。スパッ!鈍い音がした。小さな子供の悲鳴のような金切り声が上がった。客は何事もなかったかのように平然と脳みそと滴る血をすくい、ミントやドクダミの葉と一緒に胃へと流し込んだ。Toan爺さんは「サル粥店で1番儲かるのは脳みそで10万ドン(約6.7ドル)くらい、胆嚢は5万ドン(約3.3ドル)、肉が1キロ12万ドン(約8ドル)だ」と言った。
Toan爺さんは動物の売買に精通しているため、新顔に対するサルの調達ルートの説明が非常に丁寧だ。彼は「仕入元は3つ確保してある。Lam−Lien(Huong Lam村、Huong Lien村の森林)からChuc A(Chuc A森林)、Cha Lo(Quang Binh省)までな。どこも遠いが、毎月ここに4回、Dong Hoi発Vinh行きの列車でサルを運んで来るんだ。最大の仕入元はVu Quang自然保護区域の境界にあるHoa Haiという所だよ」と説明してくれた。また彼は興奮して「わしはサル狩り専用の頼もしい犬どもを数匹飼っているんだ。体は小さいが猟の才能は抜群でな。森の住人にはサル狩り犬とも呼ばれている」と言った。
Hoa Hai村に3度目に訪れ、猟師を装い猟犬を買いに行ったとき初めてサル狩り犬にお目にかかった。犬売りのTienという人に会った。彼は酒を注ぎながら「この森でサル狩りをするなら猟犬がいないとね。この仕事に就く前は、茅葺きの家に住んでいたんだ。サル狩りという仕事の恩恵にあずかるようになって初めて瓦屋根の家に住み、生活に必要なものは何でも買えるようになったのさ」と話した。買値を決める前に犬の腕試しをしたいと言うと、Tienさんはテーブルを叩き、森の方を振り返って叫んだ。「Roach!Hui!Khoang!Muc!……」と犬の名前を呼び口笛を吹いた。呼び声が森に響きわたると、犬たちは大急ぎで主人の足元に駆けてきた。Roach、Vang、Khoangと犬を紹介してくれたが、私が気に入ったのはMucという名の犬で、赤く血走った小さい目をしていた。Tienさんは、Mucは訓練するのに2年もかかったため、誰が何百万ドン払うと言っても売らないのだと言った。そして自慢げに「生け捕りにするためには、木に登ったサルを怒らせて下に跳び下りてこさせる方法を、どうやって犬に仕込むかだよ。始めは、10キロ級のサルを動けないようにして、犬に散々弄ばせた後に噛み殺させるんだ。これを繰り返すのが1番速い方法だね。あとは猟に出ると放っておいてもサルの匂いを嗅ぎ分け、挑発して捕まえられるようになるんだ。俺たちのすることといえば、サルを入れて帰る背負い籠を編むことくらいさ」と言った。森に入る前、犬たちは水、ご飯、煮込んだ骨、肉、脂、酸味のスープ(吠えた声がよく通る効果があるという)、数十個のアヒルの卵で栄養をつけ、早速リスを仕留めていた。犬を連れて歩いて5日後、もう背負えないくらいサルが獲れた時点で森を後にした。
Toan爺さんが連れて行ってくれたサル粥店は、以前はChuc Aにあった。10年近く森のサルたちを料理し続けた末、金回りがよくなりHuong Khe県の森林管理局から数十メートル先にある集落の土地を購入し、サル粥店を続けていた。森林管理局のNguyen Van Minh副局長は「今はもう、Huong Kheの集落にはサル粥店はありませんよ。森にサルがいなくなって久しいのです」と淡々と述べた。また、Huong Khe県の公安によると、同県では、野生動物や希少動物の売買、所有、運搬を禁止する規定がまだ定められていないという。
トラ、ヒョウ、熊などが、動物保護に無関心な人々に絶滅寸前になるまで殺され、今度は“孫悟空の子孫”に順番が回ってきた。本来なら保護されなければならない筈なのに、サル狩りの猟師は今だに森に入っているのだ。毎日サルが殺され続けているにもかかわらず、サル料理店は営業を続けており、廃業する気配もない。このままではサルが本当に絶滅してしまい兼ねない。早急な保護が求められている。

(Tuoi Tre Chu Nhat)

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