ハノイのバス事情について、利用者の思いは実に多種多様で、1つのテーマに対する意見だろうかと首を傾げたくなるほどだ。誰も間違ったことを言っているのではない。しかし、ハノイの路線バスでは毎日さまざまな人間模様が繰り広げられており、利用者それぞれの捉え方も異なるからだ。
夏の蒸し暑い時期に、エアコンもなく、窓は開かず、非常用ドアまでねじで止められているような年代物のバスにぎゅうぎゅう詰めにされて立っていなければならないとしたら、どんなに心の広い人でも気が狂いそうになるに違いない。しかし、これはまだ良い方で、日除けも椅子もないバス停で足を棒にして待ち続け、ようやくバスが来たと思ったら満員で見送らなければならないことも多い。このような状況はもう何年も続いているが、未だに解決されていない。ハノイ公共交通会社が国の援助を受けながら必死の努力を続けていても、この状況を改善するのは実際のところ容易ではない。
バスに乗り街並みを眺めるのは面白いが、注意していないと前方につんのめることになり兼ねない。バスのそばをバイクで走る人々も、バス運転の特徴とも言える暴走、急ブレーキ、急ハンドルにひやりとさせられたことは少なくないはずだ。
一方では、混み合った道で長い車両を操らなければならない運転手に同情する乗客も少なくない。また、車掌は、車内のマナーを気にせず、乗り降りのドア表示に従わない、嘔吐、喫煙、座席に足を上げる、偽造切符を使用するなど好き勝手に振舞う客と常に悪戦苦闘しなければならない。車掌は言葉遣いが丁寧で礼儀正しい人が多いが、中には乗客に向かって汚い言葉を吐いたり、眉を吊り上げて怒鳴り散らしたりと、乗客の気分を害するような光景を多く目にするのも事実だ。
実際バスを利用して初めてそこで繰り広げられる喜劇や悲劇が分かるというものだ。腹立たしいことも多いが、他に選択肢があってもそれでもバスを利用する客が大多数だ。というのは、バスが低料金を維持し続けているからだ。状況の改善を待ち望みながらも、老人は「これでも前に比べりゃましさ」と自分に言い聞かせ、また学生たちは「バスはいつも混んでいればいるほど楽しい」と言う。そして今日も朝早くから、車中では悲喜こもごもな光景が繰り広げられる。
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