ベトナム ホーチミン市1区Dong Khoi通りに、日本人が手がけるフォー屋「Oso」がある。店内には数々の骨董品が飾られ、道行く人々の注目を集めている。客は骨董品を鑑賞しながらフォーに舌鼓を打つ。
オーナーのTezuka Katsuyoshiさんは60歳で、骨董品とアンティーク調の木製品、そしてベトナム名物料理のフォーをこよなく愛する。彼は、15年前に初めてベトナムを旅行しベトナムの気候や文化、人々の生活に魅了され、ハノイとホーチミン市に足繁く通うようになった。現地では有名な骨董品屋などを訪ね歩き、数百年前の骨董品やアンティーク調の木製家具などを探し求めた。
骨董品や家具が相当の量になると、Tezukaさんは友人を招待する特別な空間を作りたいと、ホーチミン市中心部で物件を探した。長期滞在を決めた5年前、Dong Khoi通りに20年契約で4階建ての物件を借りた。
家の改装には4年間を費やした。扉や長椅子、棚などは、ベトナム全国を訪ね歩いて探し出した一流の職人の手によるものだ。柱や階段、扉などに施された彫刻は、全てTezukaさんがデザインした。店内には、骨董品街として有名なLe Cong Kieu通りで手に入れた逸品が所狭しと飾られている。彼は、「ベトナムと日本の骨董品の雰囲気を生かし、独特の空間を作りたかったのです。夢が叶い満足しています」と話す。
フォーが好物の彼は、和風のフォーを作ることを思い立ち、現地で多くの店を訪れては作り方を尋ね、味付けや麺の選び方、肉の切り方などを習得した。また、帰国する度に日本の伝統的なダシの取り方や味付けなどを研究した。その後オリジナルのフォーが完成し友人に試食してもらうと好評だった。日本人が作るフォーをベトナム人にも味わってもらいたいと思うようになり、2003年9月、「Oso」をオープンした。「Oso」は、日本語の「王将」に由来し、味・質ともに最高で、他のフォー屋とは一味違うという意味が込められている。
Tezukaさんは、食文化が外国との文化交流の中で重要な役割を果たすと考えている。実際、彼のフォーを食べると、ベトナムと日本の食文化の融合を感じることが出来る。ダシにはガラをふんだんに使い天然の甘味を引き出している。牛肉は機械で均等にカットし、見た目にも美しい。また日本で仕入れた調味料や香料を調合して独自の風味を加えている。
従業員には、明るい笑顔で丁寧な接客を心がけるように指導しており、Tezukaさん自ら、「いらっしゃいませ」、「ありがとうございました」と率先して声をかける。店を管理するNgoc Dungさんによると、1日の来客数は平均300〜400人で、店が混んでくるとTezukaさんもフォーを運び、食器洗いやテーブルの片付けなどを手伝うという。
オープンから約1年経った現在、店の経営も安定し、市内にさらに数店舗を出店する計画を立てている。Tezukaさんは、「この店の経営は、実益よりも趣味の方が大きいですね。ベトナム人や外国人のお客様から、フォーの味や店の雰囲気を誉めて頂いた時は本当に幸せです」と顔をほころばせる。
フォーに魅せられたTezukaさんは、多くの人々に食べに来てもらおうと努力を重ねており、値段も1杯1万8,000〜2万5,000ドン(約1.2〜1.7ドル)で提供している。「ベトナム人の方にも気軽に来て頂けるような価格に設定しています。日本や諸外国でフォーを食べましたが、Osoのように安く提供している店は他に無いと思います」と語った。
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