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シンガポールの中心部に近いGeylang地区は、清潔で整然とした他地区と比べ異質の空気が漂っている。狭い路地にごみが散乱し、バイクや車が乱暴に行き交うこの場所は、深夜、華僑で賑わう食堂街として以前から有名で、最近は店先に赤提灯が連なる置屋街としても知られている。
置屋で働く売春婦は中国、タイ、マレーシア、カンボジア、ベトナムなどからの出稼ぎで、40〜80シンガポールドル(約25〜50ドル)で客を取る。歩いて約10分のJoo Chiat通りには、数十軒のバー、キャバレー、カラオケ店が軒を連ね、歩道にはセクシーな装いのベトナム人女性がたむろしていた。それぞれの店には20名前後のべトナム人女性が働いており、シンガポール全体では1,000人近くがこれらの仕事に就いているといわれる。
あるカラオケ店に入りビールを注文すると、隣に若い女性が座った。そして、「3年前までは出稼ぎに来るベトナム人も少なかったから、給料と売春で一カ月4,000〜5,000シンガポールドル(約2,500〜3,200ドル)は稼げたの。でも最近は出稼ぎ組が増えて、チップも減ったから収入源のほとんどは売春になったわ」と話した。
夜11時半に店を出ると、歩道の両側には多くの男たちが待っていた。仕事を終え店から出てきた女性たちは、その男たちと車に乗り込み、ホテルへと消えて行く。通りには24時間営業のホテルが数軒あり、2時間20シンガポールドル(約13ドル)で部屋を貸している。
バーで働くMiは、狭い部屋に7〜8人の仲間とそれぞれ1日10シンガポールドル(約6.5ドル)を出し合い共同生活をしている。シンガポールに来た当初、売春の元締めとバーの仕事の手配師に1,300シンガポールドル(約830ドル)を支払わねばならなかったという。
金を払わず逃げる買春客はざらで、ホテルで客に殴られ、所持金と携帯電話を奪われたこともある。しかし違法行為なので警察への通報もできず、泣き寝入りするしかなかった。金を払う代わりに「何でも好きな物を買ってやる」とスーパーに連れて行かれ、そのまま人込みに消えた客もいる。
3月末、あるバーで働いていたベトナム人女性(24歳)が仕事の後、シンガポール人の恋人が住むマンションに出かけた。しかしその翌朝、彼女はマンション下の路上で遺体で発見された。警察は、彼女が10階の部屋の窓から転落したということで現在も捜査を続けているが、原因は依然として不明だ。
シンガポールのチャンギ空港で、ベトナムへ戻る飛行機を待っていた髪を金色に染めた若いベトナム人女性は、「Joo Chiat通りで働いてたけど、疲れたからもう帰るの」と話した。彼女たちが帰国し、その艶やかな身なりを見た他の女性はシンガポールに行けば楽に稼げると錯覚するかもしれない。しかしそこには計り知れない生活苦と危険が待ち構えている。
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