ベトナムの国際結婚とその障壁

 開放政策と国際市場への参入により、ベトナムでは外国人との結婚がそれほど珍しく無くなった。ベトナム人女性が外国人男性と並んで道を歩いていても、人々はそれほど気に留めない。彼らの子供たちはこの国で生まれ、この国の食べ物を食べ、話す言葉はベトナム語というように、ベトナム人として育っているからだ。

■ケース1
 2区An Phuの外国人向けマンションParklandを訪れた。Parklandの投資主である香港Chiap Huaグループのベトナム代表取締役を務めるRaymond Chengさんと、同マンションの総管理責任者Saw Leng Cheangさんは、Parklandの向かいにあるカントリークラブに案内してくれた。ここには木々や芝生、スポーツジム、プール、スチームバスなどの施設が整っている。カントリークラブの会員の中には国際結婚カップルが非常に多く、Chengさんは人一倍背の高いCheangさんを指して「彼もその1人ですよ」と教えてくれた。
 彼の妻Nguyen Huu Dieu Quangさんは、Le Van Sy通りを入った静かな路地にある瀟洒な自宅で私を迎えてくれた。居間にはピアノと弦楽器が置かれ、5カ月の赤ちゃんが寝ているゆりかごからは心地よいメロディーが流れていた。Dieu Quangさんは、1994年にSaigon Lodgeホテルで彼と初めて出会った日のことを今でもはっきり覚えているという。彼女が転職を決意し、人事部長職の面接を受けた時の担当者がChengさんだったのだ。ChengさんはSaigon Lodgeの支配人としてマレーシアから赴任してきたばかりだった。彼は仕事熱心で、人柄も良く、Dieu Quangさんに対しとても優しかった。愛し合うようになった2人は、その1年後に結婚した。
 Dieu Quangさんは以前、市の音楽学院の講師を務め、弦楽器のアーティスト、交響楽団の指揮者としても活躍していた。22歳で講師となり10年間勤務したが、ビジネスの世界でもっとやり甲斐のある仕事をしてみたくなったのだという。
「当時すでに30歳を超えていましたが恋人もいませんでした。私がアーティストというだけで、勝手気ままに生きていると周りの人々に誤解されていました」と話す。結婚後、QuangさんはP&G社とUnilever社のベトナム総代理店であるCornell Brothers社に転職し、さらにその1年後には米国のGrey Advertising社の駐在員事務所でマネージャーを務めた。現在、彼女は退職し主婦業に専念している。毎朝、彼女は早起きして市場に行き夫の朝食を作り、長女のDatちゃんを学校に送り迎えし、まだ幼い娘の面倒を見ながら夫の帰りを待つ。

■ケース2
 Tu Xuong通りにある02建築設計社の看板は小さく、注意しないと見落としてしまうだろう。近づくと、小さな犬が走り出て吠えた。ここは、アメリカ人のJoshua LevineさんとLe Ai Yen Linhさん夫妻の仕事場兼自宅だ。Linhさんは非常に物静かだが、Levineさんは大きな声でよく笑う。彼は「以前に比べて、私たち夫婦の生活はかなり楽になりました。8、9年前は、散歩をしているとひやかされたり、罵声を浴びたりすることさえありました。でも今は腕を組んで歩いていても、ほとんど何も言われません」と話す。夫婦には男の子と女の子が1人ずつおり、Colette学校へ通っている。「子供たちは学校ではフランス語を話し、家では母親とはベトナム語で、私とは英語で話します。どちらの言葉も上手に話せますよ」と得意げに語る。
 Harvard大学卒の建築士であるLevineさんは、ロサンゼルス、バルセロナ、東京など世界各地で仕事をしていた。1994年、住宅区設計の仕事でクアラルンプールに赴任し、あるパーティーでYen Linhさんと出会った。当時、彼女はオーストラリアRMIT大学の建築設計専攻の学生で、Sai Gon動植物園設計計画というテーマの卒業論文執筆に向けて、アジア各都市の現地調査中だった。結婚した2人はホーチミン市で起業することを決め、1997年に02建築設計会社を創業した。
 Levineさんは「お金を稼ぐことは一番の目標ではありませんから、ベトナムでの生活は楽しく幸せです」と話す。

■ケース3
 世界的に有名なChesterton Petty不動産管理グループ傘下のChesterton Vietnam社で社長を務めるBrett Ashtonさんと、Nguyen Thi Minh Tuさんには2人の子供がいる。子供にはベトナム国籍を取得させるため、ベトナム語の名前を付けたという。
 1996年、彼女は友人の婚約パーティーでBrettさんと知り合った。Brettさんはアメリカからビジネスチャンスを求めてホーチミン市にやって来たばかりだった。しかし好機はなかなか訪れず、資金も底をつき、財布はいつも空っぽだった。Tuさんは当時、Tran Van On学校でパソコン講師として勤務していた。知り合って10カ月後に2人は結婚した。当時を振り返り、彼女は「彼には安定した職もお金もありませんでしたから、大変でした。でも、優しく私を大切にしてくれましたから、彼の側にいることを選んだのです」と語った。
 Brettさんはベトナムに住むようになって9年が経つが、ベトナム語はあまり話せない。姑と話す時に妻に通訳を頼まなければならないこともある。「ベトナム語で一番難しいのは呼称で、未だに混乱することもあります」と言って笑う。Tuさんが大変だと感じるのは、喧嘩の時だ。「自分の気持ちや考えを英語でどう伝えればいいのか分からないことが多くて、いらいらします」という。現在の彼女は仕事を辞めて子育てに専念し、BrettさんはHung Vuong高級住宅区や2006年オープンのKinh Doビジネスセンターのプロジェクトに奔走する毎日だ。

■ケース4
 結婚コンサルタントのLy Thi Maiさんは、文化の違いを乗り越えられなかった国際カップルの悲しい話を教えてくれた。
 ある南西部の貧しい農村出身の女性が、大学に行くためにホーチミン市に上京した。容姿端麗な上に聡明だった彼女は、卒業後、ある政府機関に就職した。そこで、彼女の所属部署が担当するプロジェクトのために来越していたフランス人男性と出会った。淡い恋心が芽生えたが、深い関係に発展することはなかった。仕事を終えたこの男性がフランスに帰国してから数年後、彼女は修士奨学生としてパリに留学し、そこで男性と再会し愛し合うようになった。彼が彼女を自分の家族に紹介すると両親は大嬉びで、彼女に寄宿舎を出て一緒に住み、修士課程を修了したら結婚するよう勧めた。両親は彼女のために豪華な部屋を与え、毎日車で彼女を学校に送ってくれた。彼女が新しい生活に溶け込めるよう、彼も食事中のマナーや生活習慣の違いなどを教えてくれた。
 しかし、数カ月後、慣れない生活に疲れ果てた彼女は彼と両親に別れを告げ、静かに寄宿舎に戻った。彼の家庭は貴族的な厳しい規律や儀礼だらけで、彼女には全く合わなかった。結婚して、決して溶け込むことの出来ない生活を一生続けるよりも、1度の別れの苦痛に耐える方がましだったのだ。
 Maiさんによると、国際結婚に対する人々の見方はそれほど厳しいものではなくなっている。それは本当の愛情から結婚に至るカップルが日増しに増えているからだ。しかしベトナム人女性の中には、外国人男性の物腰や接し方を愛情だと錯覚してしまう人もいる。また、この国の女性は非常に従順で控えめな上、献身的だといった幻想を抱きベトナム人女性と結婚したがる西洋人もいる。しかしMaiさんは、愛情は2人が近づくのを助けるだけで、互いに理解し合い末永く結婚生活を送るには、共通の価値観と広い心を持ち、相手を受け入れる心づもりが必要だという。
 「幸福の方程式など存在しません。本人同士が互いを深く理解し、尊重し助け合うことが大切なのです。対等でいることは言うほど簡単なものではなく、些細な問題であってもお互いの気持ちを汲み取る努力が出来るということです」とMaiさんは話す。

(Tuoi Tre)

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