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VSIP管理委員長、ベトナム投資について語る

 「ベトナム投資−戦略と展望」セミナーが8月17日にハノイで開催され、400人を超える投資家が出席した。席上、シンガポールのTemasek HoldingsグループのコンサルタントLai Chun Loong氏は、「なぜ、ベトナムか?」をテーマとした講演を通じて出席者に多くの興味深い情報を提供し、ベトナム投資の将来に明るい展望をもたらした。
 これまで10年近くに渡り、ベトナム−シンガポール工業団地(VSIP)管理委員会委員長を務めるLoong氏は、献身的に諸外国の投資家をベトナムに導いてきた“営業マン”でもある。取材に応じた同氏は、ベトナムの投資環境における問題点を正確に指摘した。


Q: 投資誘致競争において労働力こそベトナムの強みであると一般的に考えられています。ところが、セミナーでは多くの投資家からベトナムの労働力はむしろ弱点という意見が上がっていましたが。

A: 豊富な労働力と人件費の安さという点については、優位にあることは言うまでもありません。人口の60%が30歳以下で、識字率が94%というのは、東南アジア諸国で最高の水準です。以前、アメリカのシリコンバレーにある企業をいくつか訪問した際、アメリカ人の社長にベトナム人エンジニアの印象を尋ねると、誰もがベトナム人の社員は優秀で根気強く勤勉だと評価していました。1人あたりの月平均賃金は、ハノイ・116ドル、ホーチミン市・134ドル、Binh Duong省・55ドルと、他国と比べ依然として“安い人件費”を維持しています。
 しかし、国際的知識を持つエンジニア、管理者などの指導層で、レベルの高い人材が相当不足しています。企業の経費を人件費が占める割合は3%前後と非常に低いため、他国より人件費が安いという要素だけでは国際競争に勝つことはできないでしょう。また、多くの国では生産、加工といった労働集約分野への投資誘致から、高度技術の分野への誘致にシフトする傾向にあるため、豊富な労働力が必ずしも有利な条件であるとは言えないわけです。半導体を生産する中国のある大手FDI企業では、職員は僅か20人で、あとは全てオートメーション化されており、ショックを受けました。質の高いエンジニアや人材を求めるなら、ベトナムより中国や他の国に目を向けるべきというのが投資家の一致した見方です。
 ベトナムは発展の初期段階にあります。私の経験から言うと、ベトナムの人材はトレーニングの成果が非常に早く現れると思います。今後、語学、技術といった労働市場の質の向上を図る研修システムを積極的に導入しなければなりません。


Q: 労働力の質の他、ベトナム投資誘致の問題点は何でしょうか。

A: 土地や事務所のリース料が他国に比べ安くないことですね。通信費は中国に比べると特に高くなっています。例えば、シンガポールから中国への国際電話はシンガポール国内通話料金と同額ですが、ベトナムへの通話は1分あたり0.85シンガポールドル(約0.5ドル)もかかるのです。
 交通費の高さも今後の課題です。シンガポールのある事業家の話では、シンガポール−ホーチミン市間の航空運賃は往復で500シンガポールドル(約290ドル)です。ところが、シンガポール−タイ間では、飛行距離が2倍にもかかわらず運賃は半額の250シンガポールドル(約145ドル)だというのです。ベトナムはインフラ設備、特に海港と空港の整備が遅れています。こうした交通費、事務所維持費などがコストの大きな割合を占めるものです。


Q: 現在、ベトナム投資に積極的なのは、韓国、日本、台湾、シンガポールなどのアジア諸国の投資家です。これは、欧米諸国の投資家が毛嫌いする「不明瞭、長時間、不実体」といったベトナムが改善を必要とする問題に関し、これらの国々はベトナムと文化的な共通点があり、欧米諸国よりも許容範囲が広いためではないかという見方がありますが。

A: その意見もかなりいいところをついていますが、もう少し補足しましょう。ヨーロッパ諸国の投資家は非常に慎重で現実的です。彼らの海外進出に伴う投資額は大きな金額となる場合が多く、検討から実行に移すまで時間を要するのです。また、アメリカの投資家にとって、ベトナムは依然として未開の投資先です。米越通商協定が結ばれてからまだ2年半ですから、これも時間が解決してくれるでしょう。


Q: アメリカのGannon漂白剤会社のWalter Blocker社長は、「これまでのベトナム投資は3つの段階に分けられる」と表現しています。第1期は1994年から1997年にかけてで、投資家が意気込んでベトナムに押し寄せたものの、ベトナム側の受け入れ体制が不十分だった時期です。第2期の1997年から2001年は、アジア通貨危機後の投資環境改善策が不十分で投資家がベトナムから引き上げた時期でした。2001年からこれまでの第3期は、政府による優遇政策の強化および投資環境の改善により、投資家の信用が回復に向かう時期です。今後、ベトナムにおける外国投資の展開をどう予測されますか。

A: 管理を徹底しなければあらゆる問題が起こり得ると考えていいでしょう。昨年末までの投資誘致政策は良い展開に向かっていたと思います。しかし、税制改正により外資企業の事業所得税率が25%から28%に引き上げられ、工業団地内で活動する投資家への優遇措置が廃止されるなど、状況は悪化しました。今年上半期の投資の多くは増資によるもので、新規の投資プロジェクトはほとんどありません。幸いにも、政府は早期にこの問題点に着目し、工業団地の投資家への優遇措置を継続する方向で調整を行っています。
 ベトナムが第2期のような過去の二の舞を踏むとは思いません。VSIPの仕事でベトナム投資のPRに外国へ行くと、多くの企業が真剣にベトナムの市場に関心を寄せていることが解ります。


Q: 海外へ営業に行かれる際、ベトナムのFDI誘致政策についてどのような問題が目につきますか。

A: 韓国、日本、アメリカを訪れたときは、多くの企業がベトナムの現状についてあまり理解していないように思われました。2000年にクリントン前大統領がベトナム訪問を控えていた時期に私はアメリカにいたのですが、地元の企業に、「わが国の大統領は何のためにベトナムを訪問するのだろうか」と聞かれたことがありました。私は、「ベトナムはアメリカやアメリカ企業に有益な要素を持っているのだ」と答えたものです。
 ベトナムの問題点は、国のPRに関しての努力に欠けていることです。もっと多くの使節団などを外国に送り込むべきでしょう。各国のベトナム大使館にもこの点に関して見直しと改善を求めるべきです。
 ベトナムの関連当局は、投資家にとって理想的な投資先となるよう、特に外国の大手企業と良好な関係を築き、ベトナム全体のPRに重点を置くべきです。外国の大手企業が中国とタイに投資を行ったとしましょう。ベトナムはこれらの国々に続くターゲットにならなければなりません。チャンスは逃すべきではありません。
 ベトナムのFDI誘致額は年間24億〜25億ドルと、ベトナムが持つ潜在力に比べ非常に低い水準に留まっています。実力を発揮すれば誘致額はさらに伸びるはずです。


Q: シンガポール発展の経験をベトナムに生かすことができるでしょうか。

A: ベトナムとシンガポールの発展過程は全く同じではありません。シンガポールは対外経済開放、投資誘致を行う前に、道路や住宅などのインフラ整備を徹底しました。また、工業化に備え、初期の段階から文化や芸術などの分野よりも工業、科学技術分野のエンジニア育成に力を入れてきました。PR面でも、シンガポールは世界中に駐在員事務所のネットワークを張っており、広報活動を円滑に進めています。
 しかし、私が最も強調したいのは、今日のシンガポールの姿は、長期に渡る不断の努力の賜物だということです。

(Tuoi Tre Chu Nhat)
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