私は一流大学卒業後、あるベトナムの貿易会社に就職しました。入社当日は、大学で学んだ知識を実践できると思い、希望に胸を躍らせて出社しました。しかし初日に教わったことは、ベトナム税関や品質検査機関において“手続きを迅速かつ円滑に進めるための方法”と、担当職員の連絡先でした。私は課長に、「弊社は高い品質の製品を取扱い、消費者の信頼も得ているのですから、裏工作をする必要はないと思います」と意見しました。すると課長は、「君の考えは解るが、税関職員からの嫌がらせを回避するためにはやむを得ないんだ。数百万ドル相当の取引で手続きが滞り納品が遅れれば、金銭的な損失はおろか取引先の信用まで失ってしまうからね」と言うのです。汚職の話はよく耳にしますが、まさか自分が手を染めることになるとは思いもせずショックでした。
それから間もないある日、輸出手続のため“厚みのある封筒”を手に港へ向かいました。手続きには2日以上を見込んでいましたが、担当職員に封筒を渡すとあっという間に完了し、賄賂の威力を目の当たりにしたのです。不本意ですが仕方ありません。今ではすっかり慣れてしまいました。
|